9割が知らない Radiohead の Videotape 本当のリズムを体感する快感

たとえ理屈がわかっていても、実際に自分がそう感じることができないとあまり意味がないということがある。それは音楽だと実感しやすい。

Radiohead の Videotape という曲はなんか変だなと思いつつ、原因をよくわかっていなかった。長年の疑問が以下の動画によって解消された。

人によってはすぐ理解できるかもしれないが、多くの人が勘違いというか、ピアノが1拍目、3拍目の頭に鳴っていると思ってしまう。しかし実際は違っていて2拍目と4拍目の裏だという話。

      /               /             
  4 . 1 . 2 . 3 . 4 . 1 . 2 . 3 . 4 
A:    *       *       *       *    
B:  *       *       *       *      

Aはウソ。Bが本当。* はピアノが鳴っている位置。

この動画のスネア(拍手みたいな音)は 2 と 4 で鳴っている。その半拍後にピアノが鳴っているということがわかるはず。これが繰り返されている。慣れないとガイドになるリズム楽器の音がないと途端に迷子になってしまう。

2, 4 で指パッチンをしてリズムを取るとして、パチンの直後にピアノが鳴ると思えば多分わかりやすい。ワン・ツー・スリー・フォーのワンを気にしすぎるとかえってつられてしまうだろう。フォーから数え始めるだけで感覚をつかめる人もいる。

演奏している本人たちは B だと思ってやっているであろうことが以下のライブ動画からわかる。

これは途中から変わっているのではなくて、最初からずっと同じリズムである。トム・ヨークはずっとBだと思ってピアノを弾いて、歌っている。

A→Bの変化を体感した人は、「今まで自分が聴いていた Videotape とはなんだったのか…」ということになる。あるいは、ただ単に快感かもしれない。いずれにせよ興味深い現象だと思う。

Videotape のリズムが変だと思っている人が多いであろうことは以下のような分析動画が作られていることからもわかる。

The Hidden Syncopation of Radiohead’s “Videotape” by WARRENMUSIC (youtube)

人間はどうしても最初に聴こえた音に引っ張られるから、戸惑うのは当たり前だと思う。しかし、「そういう曲だ」ということがわかってさえいれば、多くの人はそれなりに練習をすれば「そういうものだ」と思って感じることはできるようになるだろう。音楽の才能があると言われる人たちは初見で対応する能力が高いのだろう。

この手の話で問題になるのは、「そう感じないといけないのか」「そう思って聴かないといけないのか」ということだ。

別にそんなことはないし、わからなければそれはそれでかまわないだろう。大きなお世話というやつだ。ただ、挑戦したい人にとってはいい題材だと思う。自分の中にしか存在しない感覚を育てるのは楽しい。わかっているだけでは感じることはできない。できたかどうかは本人が一番わかる。

このリズムの仕組みを知ってから何年も経つが、ガイドなしのオリジナル音源の場合は油断しているとすぐ迷子になる。体になじませるにはまだ修行が足りない。