9割が知らない Radiohead の Videotape 本当のリズムを体感する快感
たとえ理屈がわかっていても、実際に自分がそう感じることができないとあまり意味がないということがある。それは音楽だと実感しやすい。

Radiohead の Videotape(In Rainbows に収録されている)という曲はなんか変だなと思いつつ、原因をよくわかっていなかった。色々調べた結果、長年の疑問が解消された。
人によってはすぐ理解できるかもしれないが、多くの人が勘違いというか、ピアノが1拍目、3拍目の頭に鳴っていると思ってしまう。しかし実際は違っていて2拍目と4拍目の裏だという話。シンコペーション、「食っている」というやつだ。
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4 . 1 . 2 . 3 . 4 . 1 . 2 . 3 . 4
A: * * * *
B: * * * *
Aはウソ。Bが本当。* はピアノが鳴っている位置。
慣れないとガイドになるリズム楽器の音がないと途端に迷子になってしまう。
2, 4 で指パッチンをしてリズムを取るとして、パチンの直後にピアノが鳴ると思えば多分わかりやすい。ワン・ツー・スリー・フォーのワンを気にしすぎるとかえってつられてしまうだろう。フォーから数え始めるだけで感覚をつかめる人もいる。
演奏している本人たちは B だと思ってやっているであろうことが以下のライブ動画からわかる。

Radiohead - Live at Bonnaroo (June 2006). 32:45~ が Videotape
これは途中からリズムが変わっているのではなくて、最初からずっと同じリズムである。トム・ヨークはずっとBだと思ってピアノを弾いて、歌っている。リズムの取り方、身体の揺らし方を見るとわかる。
A→Bの変化を体感した人は、「今まで自分が聴いていた Videotape とはなんだったのか…」ということになる。実はかなり速い曲だったと驚くかもしれない。あるいは不思議な快感を味わうかもしれない。いずれにせよ興味深い現象だと思う。
Videotape のリズムが変だと思っている人が多いであろうことは以下のような分析動画が作られていることからもわかる。
The Hidden Syncopation of Radiohead’s “Videotape” by WARRENMUSIC (youtube)
人間はどうしても最初に聴こえた音に引っ張られるから、戸惑うのは当たり前だと思う。しかし、「そういう曲だ」ということがわかってさえいれば、多くの人はそれなりに練習をすれば「そういうものだ」と思って感じることはできるようになるはず。音楽の才能があると言われる人たちはこういったことに初見で対応する能力が高いのだろう。
オリジナルの音源だとどうしても意味がわからない、ピアノが頭にしか聴こえない場合、how to hear the hidden beat in radiohead’s “videotape” や、Videotape With Idioteque Beat - Hidden Syncopation Revealed! で検索すると助けになると思う。
この手の話で問題になるのは、「そう感じないといけないのか」「そう思って聴かないといけないのか」ということだ。
別にそんなことはないし、わからなければそれはそれでかまわないだろう。大きなお世話というやつだ。ただ、挑戦したい人にとってはいい題材だと思う。自分の中にしか存在しない感覚を育てるのは楽しい。わかっているだけでは感じることはできない。できたかどうかは本人が一番わかる。
このリズムの仕組みを知ってから何年も経つが、ガイドなしのオリジナル音源の場合は油断しているとすぐ迷子になる。体になじませるにはまだ修行が足りない。